遺言を行うことは大変なこと?遺言作成ができる事理弁識能力とは?

公開日:  最終更新日:2017/08/05

遺言・相続ノート34遺言を作成する能力は、どのような時にあると判断されるの?

 東京高裁平成29年6月判決において、亡外交官の妻が、長男の子供2人に相続させる旨の遺言を残したが、その亡外交官の妻の遺言作成能力が問題となりました。平成29年6月において、妻に遺言作成当時、「重篤な障害があったとは認められない」と東京高裁は判断し、「作成当時、意識障害があり、手続きの意味を理解できたとは言えない」とした一審の判断を取り消しました。

 また回復の見込みがない心神喪失状態である遺言者の遺言作成能力について間接的に記載した最高裁判例として、平成11年6月11日判決があります。どのような判決であったのか、を記していきます。Aが生前中に、甥のCに土地の一部を遺贈する旨の遺言を作成し、養子であるBが、Aが心神喪失の状況にあることを理由に公正遺言証書の無効を訴えた事例です。

 

 この判決を行った最高裁は、Aが生存中は、Aが心神喪失の状況にあり回復の見込みがないことによって、今後、遺言の変更や取り消しが事実上あり得ないとしても、相続開始前にはCの相続人としての地位は確立しておらず、この遺言無効の確認を問うことはできないと判断しました。

 

この判例では、心神喪失の状況にあることを理由に遺言が有効であるか無効であるかは、明確には、述べてはいません。しかし、遺言を行った者が心神喪失の状況にあり、回復の見込みがない状態であること、禁治産宣告を受けていることで、遺言の変更や取り消しがあり得ないであろうことについて触れています。

 

Aが死亡によって相続が開始し、遺言が有効であることで、Cが相続人としての地位が確立し、遺言を作成した被相続人の遺言作成能力に基づいて、遺言が有効か無効かを問うことの余地を残していると考えよいでしょう。

 

この判例に基づくとすると平成29年6月東京高裁の判例おいては、亡外交官の妻が入院中に、遺言を公証人が作成し夜間に意識障害に陥っていたとしても、退院後は講演活動をしており、その遺言が妻の意思に基づかないとは言えない、すなわち意識障害を克服した後、公証人が作成した遺言を、事実上、妻が遺言を変更や取り消すことをしませんでした。

このことから、遺言作成時に遺言という手続きを理解できていたかどうか、遺言作成後、その遺言を変更または取り消すことが可能な状態にあったか否などが、遺言を作成する能力があったかどうかの判断の指標としていることが読み取れます。今後、超高齢化時代を迎え、被相続人が認知症などの心神喪失の状態で遺言を行うことが考えられます。

現時点では成年後見制度や公正証書遺言の制度、また家族信託などによって、相続の争いを予防する手立てが存在します。相続争いを防ぐ適切な方法を利用することは、相続開始後の紛争を減らす方向を導くことでもあり、被相続人にとっても相続人にとって大事な時間とコストを最小限にした相続を実現する一手段でしょう。

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